内観法とは
内観法は、1940年代に吉本伊信(よしもと いしん)によって開発された、日本独自の自己探求法です。浄土真宗の「身調べ」という修行法をもとに、宗教色を排して体系化されました。
三つの問い
内観では、特定の人物(母、父、配偶者など)に対して、次の三つを振り返ります: 1. その人に「してもらったこと」 2. その人に「して返したこと」 3. その人に「迷惑をかけたこと」 この三つを、具体的な事実として思い出していきます。
なぜ「迷惑をかけたこと」が重要か
私たちは普段、「自分がいかに傷つけられたか」を考えがちです。しかし内観では逆に、「自分がいかに迷惑をかけてきたか」を見つめます。これにより、被害者意識から離れ、謙虚さと感謝の念が自然と生まれてきます。
西洋心理療法との違い
西洋の心理療法は「個人」に焦点を当てます。しかし内観法は「関係性」の中で自己を見つめます。「私は何者か」ではなく、「私は誰に支えられてきたか」を問う。これは、人間を関係性の網の目の中で捉える東洋的な人間観に基づいています。
集中内観と日常内観
伝統的な「集中内観」は、1週間の合宿形式で行われます。しかし、日常生活の中で短時間行う「日常内観」も効果的です。就寝前の10分間、一人の人について三つの問いを振り返るだけでも、心に変化が生まれます。
内観がもたらすもの
内観を続けると、「自分は多くの人に生かされている」という実感が深まります。不平不満が減り、感謝の気持ちが自然と湧いてきます。人間関係のトラブルも、「相手が悪い」から「自分にも原因があったのでは」という視点で見られるようになります。